【肝細胞がん適応追加】テセントリク+アバスチン併用療法を考察する

MRの仕事

こんばんは、コータローです。

皆さん、先日9月25日承認の薬剤についてはチェック済みでしょうか。

今回は話題の製品が多い印象ですね。

PⅡ試験のみで条件付き承認となった楽天メディカルの光免疫療法や、FDAでは一旦見送りになりながらも国内では承認を得た競合の激しいJAK阻害剤、申請から5ヶ月で適応追加に辿り着いたエンハーツの胃がんなども注目されるところです。

そんな中、個人的には肝細胞がんでテセントリク+アバスチン併用療法が1stラインで承認されたことが特にインパクトの大きいのではないか、感じておりますので、そちらについて考えていきたいと思います。

中外製薬のプレスリリースはこちら

肝細胞がんとは

では、まずは肝細胞がんについてざっくり説明いたします。

肝細胞がんは主にB型肝炎やC型肝炎といったウィルス性肝炎が進行して起こるものであります。

(※最近はアルコール性、NASH由来の割合が増えてきています)

最近はウィルス性肝炎の治療薬が非常に充実してきたことにより、罹患数自体は減ってきているのですが、なってしまうと手術適応も限られておりますし、それ以外の治療も手技含め充実してきたとはいえ、他のがん種と比べると5年生存率36.2%という数字が表すように予後不良のがんと言えます。

上の図でも罹患数は5位に入っていないのに死亡数は5位になっていますので、そういうことですよね。

また、薬物療法については、手術ができず、それ以外の焼灼療法、塞栓療法といった肝細胞がん特有の手技もできないとなったときに登場しますので、結構厳しいです。

他の固形がんのステージⅣと比べても厳しく、薬物療法対象であれば予後1年あれば良い方といったところでしょう。

肝細胞がんの薬物療法とは

肝細胞がんは元々いわゆる抗がん剤が効かないと言われる領域でした。

そんな中、初めてエビデンスを持つ薬が出てきたのが2008年、経口分子標的治療薬のネクサバール(バイエル)です。

そこから10年ほど1stラインはネクサバールという時代が続きましたが、いかんせん副作用のマネジメントが難しく、特に手足症候群と言われる副作用はQOLを大きく落としてしまうため、バイエルのMRもそこに手を焼いている状況でした。

それに対して、現在1stラインでよく使われているのは同じ経口分子標的治療薬のレンビマ(エーザイ)です。

今やエーザイの屋台骨となっている製品ですね。

レンビマがPFS(無増悪生存期間)を大きく延長させることに成功した(OSは非劣性)ことで、2018年頃からレンビマが1stラインで使われるようになっています。

ネクサバールの手足症候群の件もあり、それに比べると使いやすいレンビマはここ数年着実に評価を高めてきました。

このようにレンビマは非常に優れた薬剤なのですが、肝細胞がんの1stライン治療としてこれで十分かと言われると、それは違います。

ネクサバールに対してOS(全生存率)を延長させたわけではありませんし、副作用の面も手足症候群は比較的少ないにしても強く倦怠感が出るという特徴もあり、こちらも服薬継続は簡単ではありませんでした。

では、テセントリク+アバスチン併用療法は?

ということで、ようやく本題です。

今回適応追加となったこのテセントリク+アバスチン併用療法は臨床的にフィットして、長く肝細胞がん1stライン治療に君臨すると考えています。

と言いますのも、これまでの課題をクリアできるのではないか、と思うからです。

その理由を2つ上げて、それぞれ説明していきますね。

ネクサバールに対してOS(全生存率)を改善させた

先程も少し触れましたようにレンビマはネクサバールに対してOSで差をつけることはできませんでした。

オンコロジー領域の治療薬を評価する上ではやはりなんと言ってもOSですよね。

肝細胞がんのように予後が短いがんであれば尚更そう思うわけです。

最適使用推進ガイドライン資料より抜粋

それに対し、こちらがフェーズⅢの主要評価項目でありますOSの結果がこちらです。

ネクサバール(ソラフェニブ)に対して、テセントリク+アバスチンはしっかり差を出しています。

ネクサバール群が13.2ヶ月に対して、テセントリク+アバスチン群は未到達でハザード比は0.58(死亡リスクを42%軽減)です。

これはこの領域において、なかなか見られないレベルの圧倒的な結果です。

また、もう一つの主要評価項目であるPFS(無増悪生存期間)に関しても同様に差が出ています。

これはレンビマとネクサバールの差ほど開いていないのですが、元々免疫チェックポイント阻害薬はPFSが短くてもOSが伸びるというような特徴が見られますので、十分な結果と言えるでしょう。

このようにこの2剤併用療法は初めてネクサバールに対してOSで優位性を示したレジメンですので、まず有効性面で文句なしと言えるのです。

治療が続けやすい

さらに極めつけがこちらです。

先程も触れたようにネクサバールはもちろんのこと、レンビマも含めて副作用で続けることが難しいというのがこれまでの肝細胞がん薬物療法でした。

どれだけ効果に期待ができたとしても、続けられなければ机上の空論に終わります。

そういう意味でもこのテセントリク+アバスチンは有力な治療法になると考えています。

最適使用推進ガイドラインより

こちらがこの試験での副作用一覧ですが、抗がん剤の試験にしては相当安全性が高いと言えるでしょう。

そもそも免疫チェックポイント阻害薬は従来の抗がん剤と比べると副作用はマイルドです。

免疫関連の副作用に注意を要しますが、それもだいぶ知見が増えてきているところですので、対処可能なものと言えます。

さらにアバスチンに関しても従来の抗がん剤にプラスすることが前提の薬剤ですので、単体での副作用は少ないです。

抗がん剤の中でも使用量は1、2を争う実績豊富な薬剤でもありますので、安心感が違いますよね。

高血圧、蛋白尿、出血など注意を要する副作用はあるもののそれもリスクに応じた対処がされていれば多くの場合問題ないでしょう。

このように両剤とも続けることが困難になるような副作用が少ないことが特徴ですので、ほとんどの場合予定通り続けられます。

肝細胞がんにおいてはそれが何より大事なのです。

まとめ

ということで、今回は「【肝細胞がん適応追加】テセントリク+アバスチン併用療法を考察する」というテーマで書いてきました。

ほんとに肝細胞がんにはこの組み合わせが良かったんだろうな、としみじみと感じています。

アバスチンは基本的には他の抗がん剤のパワーを増強する、といったイメージですが、肝細胞がんに関しては疾患特性的にアバスチン単剤でも効果にも期待ができてしまいますし、免疫チェックポイント阻害薬はキイトルーダがレンビマと併用の試験を走らせているように他がん種同様期待できると考えると、本当に綺麗に収まりましたよね。

これまでテセントリクとアバスチンの併用は他のがん種を見る限りロシュの戦略ミスだな、と思っていましたが、これに関しては恐れ入りました。

早くスタンダードな治療となって患者さんに多くのベネフィットを与えてもらいたいなと思います。

それでは、最後までご覧頂きまして、ありがとうございました。

コータロー

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